人間の視力は視野全体で一様ではなく、視野中心部分で最大であり、周辺部分に行くにつれて急激に低下することが知られています。広視野でありながら、視野の中心部分にのみ詳細な観測が可能な注目領域を与えることで視野全体の視覚情報量を大幅に削減します。さらに人間は眼球運動を組み合わせることで、広い行動空間をより少ない情報量で出来るだけ詳細に観測しています。このような人間の視覚は広角中心窩視覚と呼ばれます。私たち人間は刻刻と変化する生活環境の中で、不要な情報を出来るだけ脳に持ち込まないことで高速な視覚情報処理を可能とし、危険を回避して安全な行動を実現しています。
Space-variantビジョンは、カメラからの画像情報を取捨選択して非一様な解像度で獲得し、ロボットや自動車、コンピュータシステムの眼として用いるSmartセンシングの研究分野の一つです。その代表格である広角中心窩視覚センサは、データ通信量やストレージ量を低減し、実時間処理と呼ばれるより高速処理を可能にし、ロボットの行動決定や車の自動運転支援といった知能ロボット及び知能機械システムの眼として研究されています。近年では、路上における自動車と歩行者、医療介護現場におけるサービスロボットと患者のように人間と機械が共存する環境において、素早いだけでなくより安全に機械が行動できるように、広角中心窩視覚を有する人間が環境をどのように知覚しているかを含めた研究が行われています。