日本は、世界中を見渡しても最も急激に高齢化が進んでいる。車イスの保有台数もそれにしたがって増え、当然、車イスが絡む交通事故も増えている。自動車の自動運転化が進んでいるが、それならまず車イスの自動運転化を進めるべきではないか、という問題意識からはじまったのが、この研究だ。車イスは自動車に比べればはるかに機構がシンプルで、パワーも小さい。つまり、制御がしやすい。
車イスの事故は、大きくわけて2つ。転倒/転落などの自損事故と、交差点などで頻発する出合い頭事故だ。転倒/転落防止では、ジャイロセンサによって傾きを検知し、それを戻す、という制御を考える。交差点の事故に関しては、自動運転分野で進んでいる路車間通信や車車間通信の技術を応用することがキーになる。交差点の情報を事前にキャッチして、自動的に警告を出したり制動をかけたりするわけだ。さらに画像処理技術を用いて介助者を認識し、追従して進んでいく自動運転も研究している。普通、介助者は後ろから車イスを押して歩くが、このしくみを用いることで介助者が先に危険を察知して止まることもできる。