先輩たちの活躍 VOL.02

世界第1位。そして、その向こうに。惑星探査ローバの開発。

愛知工科大学大学院 博士前期課程

秋山 美穂さん(愛知県 あいちビジネス専門学校高等課程出身)

宇宙への夢に
魅せられて。

2019年9月、秋山さんはアメリカ・ネバダ州のブラックロック砂漠にいた。ARLISS2019(国際CanSat大会)に参加するためだ。AUTには、STELA(宇宙技術研究部)と呼ばれるサークルがあり、毎年、ARLI SSにチャレンジしてきた。秋山さんは、入学当初からそのメンバーだったのだ。「中学生の頃、理科で『地球と宇宙』という単元があって、そのスケールの大きさに魅せられてしまいました。いつか宇宙に行きたい…。もう10年も、そんな夢を追い続けてきました。AUTに入ったのも、宇宙技術を学べる大学と知ったからです」

…うん、筋金入りだ。

世界第1位。そして、その向こうに。惑星探査ローバの開発。

STELAでは、ロケットに搭載されて惑星探査を行う自律走行型ロボット、ローバの開発・製作に取り組んだ。そもそもロボットは、機械システムや通信、情報処理、電子制御など多様な技術の集合体といっていい。そのなかでもローバは、ほかの天体に着陸して自律的に活動するという過酷なミッションを背負っているので、一つひとつの技術要素が高いレベルでバランスを保っていなければならない。「例えば、プログラムにわずかなバグがあるとか、パラシュートが車輪に絡まるとか。10回に1回あるかどうかの不具合を、徹底的につぶしていくことが大切です」サークルは4年生になったら引退、という暗黙のルールがある。だが、彼女はまだ完全燃焼していなかった。4年生になり、研究室配属後に惑星探査ローバを研究テーマとして、本格的に研究を開始。さらに大学院に進学して、研究を深めていった。そして、博士前期課程2年に在学中の2019年、研究室を中心とするSuperNOVAチームで技術を磨き、ARLISSに参戦した。

ディープラーニングによる
自律走行への挑戦。

パラシュートで落下したローバは、その地点から目標をとらえ、自律走行を開始する。GPS誘導に加え、画像処理による目標補足のシステムを構築したことで、自律走行の精度は格段に上がった。「画像処理では、ゴールのコーンの色を識別するのですが、まわりに似たような色があったり、砂漠特有の強い直射日光でコーンの色がホワイトアウトしてしまうと、目標をロストする、という問題がありました」

そこで取り組んだのがディープラーニングだ。さまざまなアングルや日照条件のもとでのコーンの画像を学習させ、ローバに搭載されたカメラが視野の隅にとらえたコーンを認識できるようにしたのだ。3回のロケット打ち上げでのゴール到達距離は、1回目が0.05m、2回目が0m、3回目も0m。圧倒的な記録だ。総合優勝に当たるOverall W inner1位、ゴールへの再接近に与えられるA c c u r a c yAwar d1位、自ら設定した技術課題をクリアしたBest Mission Award1位、技術レベルを評価するTechnical S ystemAwar d2位と、4部門を受賞。大会に参加した世界各地の参加者たちの羨望を一身に集めた。

もちろん、大学院の研究テーマとして取り組んでいるのだから、賞を取ることだけが目的ではない。その成果を修士論文にまとめ、査読つきの学会誌にも発表した。さらに研究を深めるため、湘南工科大学大学院の博士後期課程に進学することも決まっている。

「AUTで出会った先生方が、私のロールモデル。ご自身の研究のおもしろさを熱く語って、その熱量で私たち学生を導いてくださいました。将来のことなんか、あまり考えずにここまでやってきましたが、今は大学教員になりたい、という想いを強く持っています」秋山さんは、10年かけて一歩ずつ宇宙に近づいてきた。そして、「ここまでおいでよ」と、後に続く若者たちを手招きしている。

ARLISS

ARLISS

ARLISS(A Rocket Launch for International Student Satellites)は、UNISEC(大学宇宙工学コンソーシアム)の主催で毎年9月に米ネバダ州のブラックロック砂漠で行われる、大学生を中心とした超小型人工衛星の大気圏内打ち上げ大会。そのなかで、惑星探査機を模した自律走行車「ローバ」をロケットから放出、パラシュートで地上に着陸した後、あらかじめ設定したゴール地点への到着を目指す競技が、カムバックコンペティション。

世界第1位。そして、その向こうに。惑星探査ローバの開発。
世界第1位。そして、その向こうに。惑星探査ローバの開発。
世界第1位。そして、その向こうに。惑星探査ローバの開発。