「僕らのチームは全員が蒲郡の出身じゃなくて、三河木綿という言葉自体、はじめて聞いたんですが、その色の美しさに圧倒されました。イメージがどんどん膨らんできて、どうか僕らに映像をつくらせてください、とお願いしたんです」
それじゃあまず当社のことを勉強していただきましょうか、とイチオリの社長から快諾を得て、工場を見学し、商品についてのレクチャーを受け、社長の想いをインタビューした。インタビューシーンと工場の織機のリズミカルな動きが重なる編集処理は、見せ場の一つだ。通常、こうしたインタビューは、事前に打ちあわせをして質問項目を擦りあわせているので、タレントではない一般の方の場合、原稿の棒読みになってしまいがちだが、作品に登場した同社の社長の語り口はとても滑らかだ。
「このシーンは、僕がインタビュアーを務めたのですが、特に“自然に”というような演出はしませんでした。ちょっと失礼な言い方かもしれませんが、お互いに息があったというか、共感するものがあったんじゃないかと思っています」
蒲郡の魅力、イチオリの商品の魅力を伝えたい。それを通して自分たちの技術を磨きたい。そんな彼らの意欲が、イチオリの社長にも伝わったのだろう。もちろん、その映像作品を観る私たちにも。