ディープラーニングによる
自律走行への挑戦。
パラシュートで落下したローバは、その地点から目標をとらえ、自律走行を開始する。GPS誘導に加え、画像処理による目標補足のシステムを構築したことで、自律走行の精度は格段に上がった。「画像処理では、ゴールのコーンの色を識別するのですが、まわりに似たような色があったり、砂漠特有の強い直射日光でコーンの色がホワイトアウトしてしまうと、目標をロストする、という問題がありました」
そこで取り組んだのがディープラーニングだ。さまざまなアングルや日照条件のもとでのコーンの画像を学習させ、ローバに搭載されたカメラが視野の隅にとらえたコーンを認識できるようにしたのだ。3回のロケット打ち上げでのゴール到達距離は、1回目が0.05m、2回目が0m、3回目も0m。圧倒的な記録だ。総合優勝に当たるOverall W inner1位、ゴールへの再接近に与えられるA c c u r a c yAwar d1位、自ら設定した技術課題をクリアしたBest Mission Award1位、技術レベルを評価するTechnical S ystemAwar d2位と、4部門を受賞。大会に参加した世界各地の参加者たちの羨望を一身に集めた。
もちろん、大学院の研究テーマとして取り組んでいるのだから、賞を取ることだけが目的ではない。その成果を修士論文にまとめ、査読つきの学会誌にも発表した。さらに研究を深めるため、湘南工科大学大学院の博士後期課程に進学することも決まっている。
「AUTで出会った先生方が、私のロールモデル。ご自身の研究のおもしろさを熱く語って、その熱量で私たち学生を導いてくださいました。将来のことなんか、あまり考えずにここまでやってきましたが、今は大学教員になりたい、という想いを強く持っています」秋山さんは、10年かけて一歩ずつ宇宙に近づいてきた。そして、「ここまでおいでよ」と、後に続く若者たちを手招きしている。