宇宙システム研究所

超小型衛星で実現する未来への道

宇宙システム研究所は、月や惑星の探査を行う自律走行型ロボット・ローバの機体の研究開発や超小型探査機の研究開発を進めてきました。現在は、従来型の大型衛星と比較して低予算かつ短期間でつくることができる「キューブサット」(1辺10cmを基本とする超小型衛星)を他の教育機関と連携して開発し、新しい技術を宇宙空間で確かめるなどの活動を行っています。この活動を通して、本学でエンジニアを目指す学生たちが宇宙に挑み、未来への道を切り拓く術を身につけてもらうことを期待します。また、活動の成果を地元に発信し、これからの宇宙時代を生きていく若い人たちに宇宙を身近に感じ、興味を持ってもらうことも目指しています。

キューブサット開発を通じた技術者育成

「キューブサット」を開発するためには、機械分野、電気・電子分野、情報分野といった多くの工学技術を上手に組みあわせることが不可欠です。すなわち授業で学んだことの実践として衛星開発を教育的に利用することも可能となります。3DCADを利用した設計、3Dプリンタによる試作や部品製作、金属の加工、電子回路の設計や実装、カメラやセンサを動かすプログラム開発などを経て、衛星システムができあがります。そして、創りあげた衛星は宇宙環境を模擬した試験を経て、当初の設計通りに動作するかを評価します。このように衛星開発は、実際の工業製品の開発製造プロセスと同等のプロセスを経て進められることから、実践的な技術者育成の場としても期待されています。本学では、高等専門学校と共同で開発した独自の衛星開発者向け教育モデルを活用した実習教育を検討しています。また、宇宙技術系の競技会である模擬人工衛星(缶サット)の大会に参加する学生へのサポートも行っています

「キューブサット」関連の設備

研究所には、打ち上げた人工衛星を運用するための衛星通信用パラボラアンテナ、衛星追跡装置、通信機といった衛星管制システムが設置されています。また、衛星開発用の3DCADや解析ツール、3Dプリンタ、そして独自開発の衛星軌道シミュレーションツールなども備えています。

研究内容

開発者向け衛星モデル

衛星開発初心者が衛星の構造、組み立て、ミッション提案・実装・評価までを実践的に学習するための衛星モデルです。主に市販のマイコン、センサ類で構成されていますが、実際の衛星とほぼ同一のシステム構成となっているのが特徴です。現在、高等専門学校における宇宙教育でも活用されています。衛星開発の知見を活かして、本格的であつかいやすいモデルへの改善を進めています。

軌道シミュレーション

人工衛星は、地球の万有引力やその他の微小な力などの影響を受けて運動します。そこで、人工衛星の適切な運動モデルを立て、数値計算技術を用いて方程式を解くことで、人工衛星の軌道を推定することができます。写真に示すのは独自に開発した軌道解析ツールで得られた地球周回軌道の一例です。本解析ツールは、開発中のキューブサットでも活用しています。現在、より高精度な解析ができるように解析ツールを改良しています。

宇宙システム研究所所長

中谷 淳  教授(電子ロボット工学科)

研究分野

宇宙工学/軌道力学/宇宙教育

経歴

2023年4月 – 現在 愛知工科大学 工学部 電子ロボット工学科 教授
2022年4月 – 2023年3月 愛知工科大学 工学部 電子ロボット工学科 准教授
2008年4月 – 2022年3月 岐阜工業高等専門学校 機械工学科 准教授
2005年4月 – 2007年3月 岐阜工業高等専門学校 機械工学科 講師
2004年4月 – 2005年3月 室蘭工業大学 工学部 機械システム工学科 技術補佐員