カーボンニュートラルの一環として、水素を燃料に用いたシステムが多く研究されてきています。燃料電池による家庭用発電システムもその一つです。しかし、燃料電池での発電には高純度な水素が必要であり、実際にはLPG等のガス燃料から水蒸気改質法を用いて水素を生成し発電しており、カーボンニュートラルであるとは言いがたい状況です。
そこで、阿部研究室は、低純度な水素で十分に駆動するエンジンを用いた家庭用発電システムの構築を目指して研究を進めてきました。
燃料電池の最大の利点はエネルギー消費効率の高さであり、9割以上を電気エネルギーに変換が可能です。一方、エンジンを用いた発電は3割程度で、十分な効率を確保することが出来ません。そこで、コージェネレーションシステムを用いて、発電時の損失である熱エネルギーを回収することで総合効率で9割近いエネルギー消費効率を目指します。
また、使用する水素燃料はグリーン水素の代表的存在である再生可能エネルギーを用いて水を電気分解して生成した水素を利用することを考えました。しかし、この生成システムはエンジンの一般的な燃料供給システムであるポート噴射で必要な燃料圧力を確保することが出来ません。そのために、ポート噴射で使用するためには生成した水素を高圧で充填し直す必要があり、その際に電気エネルギーが必要となり損失してしまいます。
この損失を考慮し、低圧で燃料供給を行うことの出来る水素エンジンの研究が必要となります。そこで、本研究の燃料供給にはミキサーと呼ばれる燃料圧力が3kPa以上で動作するシステムを用いる事としました。なお、このシステムでは、バックファイヤが致命的な問題となるためバックファイヤを抑制する制御システムの構築も合わせて研究を行う予定です。
今回の実験は、低圧の燃料供給システムを用いた水素エンジンの駆動を行った物で、効率等は考慮していません。
今後は燃焼解析を行い、より高効率な駆動を行うことの出来る制御システムの構築を目指します。